阿南 剛
- 2001年10月 弁護士登録 森綜合法律事務所(現 森・濱田松本法律事務所)入所
- 2007年4月 末吉綜合法律事務所(現 潮見坂綜合法律事務所)開所 パートナー就任(現任)
- 2020年7月 株式会社大塚家具 取締役就任
- 2021年5月 当社 監査役就任(現任)
- 2022年6月 株式会社エージーピー 取締役就任(現任)
1. 現在までのキャリアを簡単に教えて下さい。
2001年に弁護士となって以降、企業法務を中心に幅広い案件に携わってきました。
特にコーポレートガバナンスやコンプライアンス、株主総会・取締役会対応などを専門としてきました。INFORICHには2021年5月から監査役として関わっています。
これまでの弁護士業務で得た知見をINFORICHの経営陣にもフィードバックするようにしています。
2. 上場前からINFORICHに関わっていただいていますが、上場前と今で、一番変わったところはどこだと思いますか。
一番の変化は、組織の規模と直面する課題の多様化・複雑化だと感じています。
上場前は、どちらかと言えば個人商店的な雰囲気が強かったという印象で、シンプルな目標に向かって一直線なエネルギーで走る会社でした。しかし、上場を経て、社員数も増え、多様な人材が集まり、扱う事業領域や課題が大きく拡がっています。M&Aや海外展開など、従来経験したことのない新しいチャレンジと、それに付随する管理や統制の必要性が増していると感じます。
一方で、「貪欲に学んで前に進む」、「素直に受け入れて柔軟に変わる」企業文化は変わることなく維持されていると感じています。経営陣はもちろん、社員のみなさんにもその文化は浸透していると思います。
3. 現在のINFORICHのガバナンス体制をどう評価されていますか。
ガバナンス体制は、非常に実効性が高い水準にあると評価しています。
具体的には、取締役会や監査役会がしっかり機能しており、経営陣に対して率直な意見やブレーキをかける役割と、背中を押す支援を両立できています。社外役員も多様な経験・専門性を持った方々が選ばれており、上場前より一層ガバナンス意識が浸透し、外からの健全な緊張感が高まっています。
ただし、組織が大きくなる中で、「特定の人に依存しがちな体制」から「組織全体でリスクを管理し、誰が抜けても回る体制」へ進化する必要性も感じています。
企業が成長していく中で、管理部門が強化されることは必要不可欠です。M&Aや海外展開の実施後のモニタリングや、新規事業に対する法的なチェックなど、必要な作業は規模が成長すると増加していきます。
優秀な人材が集まる企業になるために、様々な面から職場としての魅力も高めていく必要があると感じています。
4. 取締役会についてはどう感じていらっしゃいますか。
非常に質が高い議論が行われていると感じます。
社外取締役や社外監査役が遠慮なく、率直な意見を述べる土壌があり、建設的な議論と意思決定ができています。言うべきことを言える雰囲気が、会社の成長を下支えしていると感じます。
運営の面でも、ここ1~2年でレベルが大きく上がったと思います。
資料準備や事前のブリーフィングが徹底されたことで、取締役会での議論が本質的で集中度の高いものになりました。
5.今後のINFORICHの経営課題と、期待していることを教えて下さい。
当社はこれまで非常に順調に成長してきたと思います。
しかし、どの会社にも必ず“踊り場”や壁にぶつかる瞬間があります。何らかの不祥事などによってお客様にご迷惑をおかけする事態が発生することも、どのような企業にもあり得ることです。
そうした局面でどう乗り越えるか、つまりレジリエンスや危機対応力が、これからのINFORICHにとって特に重要な力になると考えています。
少人数体制で機動力高くやってきたことは強みでもありましたが、今後は「その人がいなくても会社が回る仕組み」を実現する必要があります。大きくなっているフロントを支えるだけのバックオフィスの体制・機能の強化や、会社全体で課題を解決できる体制の構築が経営課題だと認識しています。
どの会社でも管理部門や専門人材の採用に苦労していますが、今後INFORICHとしても、その内製化や外部リソース活用を含め、「組織そのものをもう一段階進化させること」が求められると感じます。
また、サステナビリティやダイバーシティ、従業員・社会との信頼構築といった視点も重要になっています。従業員との信頼関係を構築するため、従業員一人ひとりが安心して働ける環境作りが、今後より一層求められると思います。そのためにも、経営層や管理職の中での多様性の拡大に取り組む必要があります。
個人情報や人権に対する意識の高さや、コンプライアンス感度の向上も欠かせません。たとえば新たな国や市場への展開時には、人権問題や社会課題へのリスク感度が問われますし、これまで以上に組織全体で早期発見・早期対応ができる仕組みの強化が必要です。
現場や管理部門だけで頑張るのではなく、経営陣を含め、会社全体で課題意識を共有し、必要なリソースや環境を確保していくことが大切だと思います。世の中全体で人材不足が深刻な中、INFORICHの事業やカルチャーの魅力を高めて、優秀な方々に「選ばれる会社」にしていくことが、ポイントになるでしょう。
全体として、これまでのように個人の頑張りに頼るのではなく、「組織として持続的に成長できる仕組み」をつくる段階に来ていると思います。
INFORICHの持つ柔軟さ、向上心、そして課題にも前向きに向き合う社風が、成長エンジンになっていくことを期待しています。